[vol.1]唐津絵理×東海千尋×ゲスト?! 『Rain』プロデューサーに聞く、ダンサーの魅力と再演へ

2023.08.03 INTERVIEW

©︎Naoshi HATORI

7月17日(月)にInstagram Liveにて実施したトークを一部編集してお届けします。

ゲスト:堀川七菜、畠中真濃、鈴木竜、土本花(トーク順)
参加者:唐津絵理、東海千尋、神村結花(DaBY)

東海:本日は、出演者にフォーカスしたトークということで、ダンサーの方々もお呼びしてお話を伺いたいと思います。前回のTwitterスペースのトークでは、公演ができるまでについてお話いただきましたが、本日はこの先のツアーについてもお話できればと思います。唐津さん、この先のツアーについて教えていただけますでしょうか?

唐津:3月に愛知県芸術劇場にて初演を迎えましたが、わずか5ヶ月で再演をできることになりました。愛知県芸術劇場とDance Base Yokohamaとで連携する目的の一つとして再演を行うということがあります。日本では、長い時間をかけて創作した作品でも初演で終わってしまうことが多く、ダンスを仕事にすることができないという状況にも繋がっています。そのため、再演できる場をつくるということを自分自身の使命にもしています。昨年は、20〜30分の短い作品をいくつか組み合わせ、ダブルビル、トリプルビルの形式で「パフォーミングアーツ・セレクション」として、全国7ヶ所でツアーを行いました。今年は、DaBY初めてのフルレングスの作品を様々再演したいと思っていたろこと、素晴らしいご縁をいただけて、全国3ヶ所で上演が決まりました。新作で、どのような形になるかわからない状況でツアーが決まるということは日本ではなかなかあることではありません。さらに11月には、香港の公演がありまして、これから4カ所で公演ができるということになります。7月から再演に向けたリハーサルを行っています。

新国立劇場では8月の4日、5日、6日で、実は欲張ってしまい、5公演あるので、ダンサーにとって結構ハードなのですけれども、みなさんからは頑張りますと言ってくださいました。1回でも多く踊る機会とご覧いただける機会を作りたいというのが私の気持ちです。なので、公演数をとにかく多くしたということがあります。それは、一方でチケットを売らなければいけないということにもなりますので、観客の皆さんにはぜひ劇場に来ることで応援していただきたいなと思います。

8月18日(金)には愛知県の幸田町民会館で、上演いたします。こちらは最寄駅から歩いて30分かかるのですが、新しくて素敵な劇場です。田んぼの中にあるような劇場なのですが、、町長さんが芸術に対して理解があって素晴らしい劇場が造られたということで、そういう経緯も含めて見に来ていただけると面白いかなと思います。
すごくお値段も安く設定しており、3000円となっています。お越しいただくのに交通費がかかるだろうなということも考えて、3000円の設定を決めました。幸田町の近くの方で、なかなか普段ダンス公演を見に行くことができない人に見に来ていただきたいということと、遠くからでもお越しいただきやすくするための価格設定です。なので、愛知県の普段行ったこともないような場所に夏休みに来ていただく、ということでもいいかもしれないですね。

国内ツアーの最後になるのは、8月27日(日)に上演する北九州芸術劇場です。北九州芸術劇場は九州の福岡県にあるのですが、この世界ではよく知られている素晴らしい劇場です。大きな舞台で機構も充実していますし、特に演劇などではプロデュース作品も手掛けられたりしています。今までバットシェバ舞踊団などでご一緒していますが、前衛的なコンテンポラリー・ダンスも上演されています。本当に劇場自体がとても素晴らしいところなので、こちらも夏休み最後に遊びに行かれるのも良いかなと思います。

また香港公演は、11月10日(金)から12日(日)に予定されています。日本でいう新国立劇場のような香港の国立の劇場、香港文化センターが会場になります。香港には国の主催するフェスティバルが2つあるのですが、そのうちの1つです。そして、1つはしごできるプログラムがあるのですが、それがデミトリス・パパイオアヌーの公演になります。このプログラムとはしごすることができる点も魅力の1つかと思います。香港では、米沢唯さんが出演できないため、実は香港にオーディションに行ってきました。香港アカデミー・オブ・アーツという芸術大学の舞踊学部のの大学院生の方が出演することになりました。バレエベースではなく、中国舞踊など民族的なベースを持つ方でコンテンポラリーもできるということなので、また全然違うタイプのダンサーですので、その違いも面白いのではないかと思っています。

東海:ありがとうございます。今決まっているだけでも11月まで続くということなので、今後が楽しみですね。これからどんどん作品も進化していくと思いますし、また出演者も途中で変わることによる変化もあると思うと今から楽しみです。

では、まずは、米沢唯さんのことからお話を聞いていければと思います。改めて、唯さんに対して、『Rain』に出演いただくことに対する唐津さんの思いなどありましたらコメントをいただければと思います。

唐津:唯さんは、今回出演している方々の中で一番付き合いが長く、彼女が小学校の高学年くらいの時からコンクールや発表会などで観てきています 米沢さんは、愛知県の塚本洋子先生のところにいらっしゃったので、いろいろな公演で目にする機会がありました。特に唯さんが中学校、高校に入るぐらいから、とても存在感があり、愛知県の中でも目立った人になっていきました。愛知県はバレエ団がすごく多く、コンクールも多いので、コンクールに参加して賞を取るダンサーさんたちがすごく多い中でも、唯さんは当時から非常に目立っていました。

2003年から2005年ぐらいまで、愛知ダンスフェスティバルという企画を毎年プロデュースしており、一つのテーマに対して、地元のバレエ団やゲストを招いて、プログラムを作るという公演を実施していました。例えば、第一回目は、「ダンスの系譜学」に似ているのですが、「ダンスの歴史を巡る」というテーマで「ダンス・クロニクル」というタイトルの公演を企画しました。、一番最初に『ジゼル』を上演して、その次に『白鳥の湖』、『くるみ割り人形』といった古典作品を上演して、その後、ネオクラシックそして最後はコンテンポラリー作品を上演するといったプログラムで構成されていました。その中で、毎年オーディションでダンサーを募って作品を創っており、その時に唯さんが自分からオーディションに参加してくれたのです。まだその頃はコンテンポラリーの経験もたくさんあった訳ではなかったと思うんのですが、非常に熱心に挑戦してくれました。

白河直子さんと大島早紀子さんが立ち上げたH アール・カオスという一世を風靡したダンスカンパニーがあるんですが、唯さんは、H アール・カオスのファンクラブに入られていたのだそうです。ファンクラブの会員になるぐらい唯さんが大好きなカンパニーだったということもあり、大島早紀子さんが振付をする作品に出演してくださったり、あとは笠井叡さんの作品や、アレッシオ・シルヴェストリンさんの作品にも参加していました。いわゆるバレエ団で上演しているようなコンテンポラリー・バレエよりもさらに前衛的な舞踏などのアバンギャルドな作品でも、物怖じせず、どんどん挑戦されている姿がとても印象的でした。

いろいろな方がオーディションにいらっしゃったり、参加してくださるのですが、唯さんが出演する部分は、まだ高校生だからそんなに多くなかったのです。でも、自分が出ていないときに、「残ってていいですか?」と言って、クリエイションの最初から最後までずっと見ているのです。16歳ぐらいで、他の人の稽古を全部見ることをできる人は少ないと思います。当時の唯さんから、人に与えられたものを受け取るだけではなくて、作品を創ることにすごく前向きな強い意志を感じていました。なので、いつか機会があれば彼女と一緒にクリエイションをしてみたいなと思っていました。

東海:なるほど。かなり若い頃からクラシックだけではなく、様々な作品を通じての唯さんをご覧になっているのですね。

唐津:そうですね。両方見ていますね。特に保守的な地方のバレエ団で活動しているダンサーだと、とにかく古典を踊りたいという思いが一番大きいんですよね。先生方もそうですし、唯さんも多分最初はそうだったと思うんですね。ただ、古典ではない作品を創っていくことにコミットしていきたいとか、H アール・カオスのファンクラブに入るぐらい他のジャンルのダンスに対してすごくオープンであるというところが特筆すべきところだと思います。

例えば、シルヴィ・ギエムやナタリヤ・オシポワのような超一流のバレエダンサー達は、皆バレエもコンテンポラリーも両方踊るわけですよね。古典を極めたから次にコンテンポラリーにいくとか、年齢的に古典が踊れなくなったからコンテンポラリーにいくという場合もありますが、いわゆる古典バレエの形式の中だけでは収まらない、もっと違う自身の感情や表現を追求したいという思いがあると思うのです。その好奇心が、日本にいるとなかなか満たされないこともあるのではないかと思うので、これを望んでいるダンサーの方々には、いろいろな機会がもっとあったらいいだろうなと思っています。

東海:今回、唯さんは8月の公演にも出演いただきますが、デュエットのお相手が変わりますよね。リハーサルを拝見されていてご感想などありますか?

唐津:前回は、吉﨑裕哉さんだったのですが、今回は中川賢さんが出演されます。私も知らなかったのですが、賢さんと唯さんはよく行くお風呂屋さんが同じで、時々お風呂に行くときに会うそうです。(笑)すごく前から知っていてお風呂屋さんも一緒だけれど、実は踊ったことがないというのも面白いなと思っていて。実は、唯さんに、「誰か他に踊りたい方はいらっしゃいますか?」と聞いたことがあります。そこで、何名かお名前が挙がったうちの一人が中川さんでした。昨年、新国立劇場で上演された平山素子さんの『春の祭典』(2022年11月、新国立劇場 中劇場)には、唯さんも賢さんも出演されていたのですが、ダブルキャストとして別日に出演していて、一緒には踊っていらっしゃらなかったそうです。一緒に稽古はしているんだけれども、パートナーとしては踊る機会がなかったということなので、どんな舞台になるか楽しみにしています
7月から稽古始まりましたが、デュエットがすごく自然に感じました。初めて踊ったと思えないぐらいでびっくりしました。

東海:周りのダンサーからも、「自然体な感じがします。」 と話が出てましたよね。唐津さんから見てもそのように思われますか?

唐津:そう思います。賢さんが持つ雰囲気もあると思いますが、お互いにフラットでいられている関係性にあるように思います。今は、まだ唯さんの方が作品のことをより深く知っているという状況なので、普通デュエットは女性が男性に身を預ける女性という状況になることが多いですが、今回はそうではなくて、女性に身を預ける男性に近い形になっています。そういった意味でも、フラットな感じに見えているのかなというのが今の印象です。この関係性が、時間が経つにつれてどのように変わっていくのかなと感じています。

他にもダンサーが2人ほど変わっているので、全体的に作品の印象がかなり変わるのではないかと思っています。

vol.2につづく

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